人間細胞を「若返らせる」ことに成功

なんと”また” 今度は英エクスター大学とブライトン大学の共同研究グループが人間の細胞を若返らせることに成功したそうです。

BMC
学術誌「BMC Cell Biology」オンライン

現代から未来にかけてのしばらくの間、人類にとって「若返り」は医学界におけるトレンドワードのトップに君臨することは確実だと思います。

少し嫌な表現になるかもしれませんが、世界の富の大半は先進諸国に集中している状況にあって、その先進諸国がもれなく”高齢化社会”となってしまっている以上、「若返り」に視線が注がれることは必然なわけですね。

そうした中で今回発表された内容をざっと要約してみましょう。

一つの細胞は寿命を終えると死滅してしまいます。そこで細胞は分裂という手段で組織の維持をします。単純に言いますと、分裂が死滅を上回れば組織が大きくなって”成長”するわけです。

この細胞が分裂できる回数には限りがありまして、これを司るのが”テロメア”という仕組でして、分裂するたびにテロメアの長さが短くなって、ある長さより短くなると分裂が止まるわけです。分裂が止まった細胞は劣化の道をたどって死滅します。そこでこのテロメアが短くならないことに成功したというのが今回の研究成果ということです。

そしてそのテロメアの長さを保つことが出来た成分が、赤ブドウ、赤ワイン、ダークチョコレートに含まれるポリフェノールの一種の”レスベラトロール”ということ。昔から「赤ワインはお肌の若返りに良い」なんて聞いたこともあるかと思いますが、それを裏付けるようなお話にも思えますね。

ただ少し冷静に考えてみますと、冒頭でも言いましたように近年の医学界では若返りであったりアンチエイリアシングな話題が多くありまして、実は今回のような”細胞の若返りに成功”なんて話題も色々とあるわけです。ハーバード大学の研究チームなどが発表した”NAD”なんて成分や、日本の企業が開発した”NMN”なんてのも少し前に話題になりました。

「え?どれが正しいの?」

そう思う人もいるのではないでしょうか。しかしこれらの全ては”嘘ではない”のです。正しい手順で行われた実験などから発表された事実なのですから、それぞれが一つの真実であることに間違いはないのです。

そもそも研究結果というものは、発表された後に反証され、確証とされるもの。そしてそれが実用化できるレベルに調整されることで私たちが使用できるようになる手順をふみます。

ですので今回の研究も含め、こういった魅力的なニュースから安直に「じゃあ赤ワインを一杯飲もう」や「チョコレートを沢山食べよう」なんていう行動は控えた方がよいなと思うわけですよ。もちろん実用化されて個々人の期待に応えられるものとなってもらえることを望みますし、そうなったら私も一番にその恩恵にあずかりたいと企んでいる1人なのですから。

 

【参考サイト】

「BMC Cell Biology」https://bmccellbiol.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12860-017-0147-7

秋田の男性は短命?深刻な寿命格差

みなさま「ハツラツ生活2017冬号」はお手元に届きましたでしょうか?

そちらでも書きましたが”健康格差”についてもう少し考えてみました。

 

統計学とかビッグデータなんて言葉から始めると少し難しく感じられる方もいるかもしれませんが、近年そういった膨大な個別データを解析して社会的に新しい指針を読み取ろうとする作業が広く行われていることは何となくご存知でしょう。単純に商売目的のものから社会的意義を含んだものまで様々あり、それは日本も例外ではなく、こんな本もよく読まれているようです。

健康格差
「健康格差 あなたの寿命は社会が決める」

健康や命というものは非常に個人的なレベルで認知されがちで、このような広い範囲からグループ分けされると、どことなく他人事のように思えてしまう方もいらっしゃるようですが、全ての基準は個人から始まった数字ですので、むしろみなさん個人に最も近いお話であることは大切な視点です。

こちらの本の中では、”秋田県の男性が短命である理由”や”東京23区で短命な足立区が取り組むプロジェクト”などの具体例をもって「個人の寿命は社会によって決められる部分がある」という主張をされています。社会ということは私たち個人の集まりですので、個人でもそういった意識を持つことを啓蒙する意味合いも含んでいるといえますね。

世界的に言えば人類史上初めて人口の半分以上が都市部にするようになった現代、それはつまり人工的につくられた環境の中で暮らす人々が増加していることとなります。もちろん自然環境も過酷ではありますが、人工環境の弊害は分かり辛い分、手遅れになるまえに”調整”を求めようと試みているわけです。

日本も随分前から「高齢化社会」と言われ、その傾向が今後ますます高まることは避けられない状況にあります。そこで国として”高齢者が増えるのは仕方ないから健康で自立できる状態を長く保ってもらう”という方針を社会構造的に進めようとしているようにも見えますね。それだけ改善されない”高齢化”が深刻であるということなのでしょう。ただ何だか国として言われると、先程も言ったように”他人事”のように聞こえる部分もありますし、ちょっと上から言われているようにもの感じてしまう方もいるような気がします。しかし、よくよく考えてみれば私たち個人に還ってくるお話ですので、住む場所の環境によって寿命が左右される事態はできるだけ避けたいもの。そして健やかな人生を長く過ごすためにも、実は既に結構たくさん発表されている、こういった情報には注意を向けていきたいですね。