日本には古くから『矍鑠』という言葉があります。”かくしゃく”と読みます。
年をとっても、丈夫で元気のいい様子。という意味ですが、それはつまり古くから年を取ると見るからに丈夫でなく元気がない様子になることが前提認識にあるという証左ですね。
「あの方はいつも矍鑠とされてご病気なんて無縁そうねー」
などといった風に使われますが、こういったセリフはお年寄りの所作を見て語られる訳ですから、動作が早いことなどを見て判断されるわけです。
先日この人的知覚から語られてきた因果が科学的に明らかにされました。
『Gait speed and survival in older adults.(高齢者の歩行速度と生存)』
つまり歩くスピードで、人間の余命が計算できることが証明されたのです。
解明は米国ピッツバーグ大学老年医学部門のMD MPH、Stephanie Studenski氏らによるもので、JAMA誌2011年1月5日号に掲載されたこの研究は、合計34,485人を対象に6~21年をかけて追跡調査された統計解析の結果でわかったものです。
既に分かりやすくグラフ化されているものがありましたので参照として置いておきますね。10mを歩く速度と年齢から余命が一目瞭然でわかります。(参照引用元:ブログ「リハビリmemo」さん)
筋力を中心に代謝や各機能が統合的に表れる歩行は、人体の成績表とも言える指針で、今回の研究はそれを数値的に明確にしたものです。
簡単に言うならば早く歩ける方の余命が長いことが明確に分かりますし、早く歩くには筋力の維持が重要だということ。そして早く歩くには歩幅は大きめに上半身も使って有酸素運動を行うわけで、これまであらゆる角度から日々のウォーキングの有効性が語られてきましたが、今回新たな指針が提示されたこととなりますね。目安は1秒で80cmの歩行が基本となり、それを上回る歩行速度ですと余命が平均を上回ります。1秒で1.2mだとベストだと言えそうです。
とはいえ、いきなりは難しいこともあるでしょう。最近は筋力減少を抑えるサプリなどもありますし、無理なく毎日の歩行を心がけるところから始めてみてはどうでしょうか。
【参照論文】
Studenski S et al. Gait speed and survival in older adults. JAMA. 2011 Jan 5;305(1):50-8.